第3章 不思議なみぞの鏡【賢者の石】
その日の夜。
私とロンはハリーの透明マントに潜り込みながら、彼の言っていた鏡のある部屋に向かった。
だけど中々見つからないのか、一時間近くは暗い通路をさ迷っている。
暗かったから道が分からなったのかしら。
それとも迷子になっているのかしら·····なんて思いながら私は寒さに身震いする。
「凍えちゃうよ。もうあきらめて帰ろう」
「いやだ!どっかこのあたりなんだから」
「じゃあ、あと一時間見つからなかったら諦めましょう。流石に風邪ひいちゃうわ」
「·····うん」
ウロウロとしながらも、私とロンは寒さに凍えそうになっていた。
暫くするとハリーが、ある鎧の近くで足を止める。
「ここだ·····ここだった·····そう」
三人でハリーの言ったドアを開けた。
そして部屋に入った途端、ハリーはマントを投げ捨てるようにすると鏡に向かって走る。
「あれが、例の鏡·····」
するとハリーは鏡を見てから、笑顔になると私たちに顔を向ける。
「ねっ?」
だけど、鏡にはハリーしか映っていない。
彼のご両親は映っていなくて、私とロンは少しだけ首を傾げた。
「何も見えないよ」
「ええ、何も見えないわよ、ハリー」
「ほら!みんなを見てよ·····たくさんいるよ」
「貴方しか見えないわ、ハリー」
「ああ。僕も、君しか見えないよ」
「ちゃんと見てごらんよ。さあ、二人とも僕のところに立ってみて」
ハリーに引っ張られて、私はさっきまで彼がいた所を立ってみた。
そして鏡を見れば、私しか映っていない·····いや、映っていなかったのに·····。
鏡に、私の両脇に男女が立っていた。
一人は私と同じ黒髪をハーフアップにしている、私そっくりな女性。
そしてもう一人は、私と同じ真っ赤な瞳に金色の髪の毛を持つ男性。
この二人は、名付け親が写真で見せてくれた·····。
「父さん、母さん·····?」
「え、アリアネ何言ってるんだ?」
「私の、父さんと母さんが映ってるの!鏡に!」
父さんと母さんは目を細めて、静かに微笑みなが私の両側に立っていた。
「君しか映ってないよ·····?」
「·····え?そんな、ロンも見てみてよ!」
私はロンの腕を引っ張り、彼を鏡の前に立たせる。
だけど確かに、鏡にはロンしか映っていなくて眉を寄せていればロンが鏡に映った自分の姿を夢中で見ていた。