第1章 ホグワーツ魔法魔術学校【賢者の石】
話しているうちに、窓の外の風景が変わっていた事に気が付いた。
牛や羊のいる牧場の傍を走り抜けていき、私たちは暫くそれを黙って見つめる。
「そういえば、アリアネは昔から僕のこと知ってたの?」
「知ってたわ。名付け親とかモリーおばさんに話は聞いていたの。私の、幼馴染になる筈だった子がいるんだって……だから、ずっと会いたかったの」
だけど、会いに行けなかった。
何度も強請って、お願いしたけれども『ごめんね』と頭を撫でられて宥められるばかり。
ハリーに会いに行けたことはなかったのだ。
「……でも、今日こうして会えて嬉しいわ」
「僕も会えて嬉しいよ。ハグリッドが色々教えてくれたんだ。アリアネは黒髪に赤い瞳で、赤い雫型のピアスをしてるから直ぐに分かるだろうって。最初、ロンたちのお母さんに声をかけたときに、居ただろう?あの時、もしかしたらこの子なのかなと思ったんだ」
「私の瞳の色は、目立つものね。あとこのピアスも」
黒髪は母さん譲り、瞳の赤色は父さん譲りらしい。
そしてピアスは母さんの形見で、6歳のクリスマスの日に渡されてから付けている。
「この目、血の色みたいだって言われる時があるから……私は、あまり好きじゃないの」
父さんと同じ目をしてるらしいけれど、小さい頃から意地悪な子たちに【お前の目は血の目だ!】って言われていた。
その度に、ビルやチャーリーがその子たちを怒ってくれたけれど……私は自分の目を嫌いになっていくばっかり。
「そうかな?僕は、アリアネの目の色好きだよ。宝石みたいだし、夕日の色みたいだから」
「……ありがとう、ハリー」
「ハリー、君って案外ロマンチックな事言うんだな。ビルも同じ事言ってたよ。アリアネの目の色は、宝石だって。僕はケチャップじゃないかって言ったらさ、フレッドたちにモテないぞって」
「それはフレッド達が正しいわ。女の子に、ケチャップの色の目なんて言って、モテる訳ないでしょう」
そんな会話をしていれば、いつの間にか時刻は十二時半ごろになっていた。
通路からはガチャガチャという音が聞こえて、えくぼが目立つおばさんがニコニコと笑って扉を開けてくる。
「車内販売だよ。何かいりませんか?」
「車内販売……少し、買おうかしら」
「僕も買おうかな。朝ごはん食べてないから、お腹減ってるんだ」