第1章 ホグワーツ魔法魔術学校【賢者の石】
ハリーはそんなロンを笑ったりはしなかった。
それどころか、何処か羨ましげにしているような……そんな感じが見て取れる。
あの時、ハリーだと気付いてから違和感がある。
ハリーが着ている服はダボッとしていて、眼鏡は傷だらけだし、身体は痩せっぽっち。
(こんなに痩せてる……マグルの家では酷い扱いを受けていたのかしら)
ひどいもんさ、と言っていたハリーの言葉を思い出す。
きっと酷いことをされたのかもしれないと思っていれば、じわりと怒りが滲みだす。
そんな時、ハリーがぼそりぼそりと呟いた。
「ーそれに、ハグリッドが教えてくれるまでは、僕、自分が魔法使いだってこと全然知らなかったし、両親のこともアリアネのことも、ヴォルデモートのことも……」
私とロンは息を飲んだ。
「どうしたの?二人とも」
「君、【例のあの人】の名前を言った!」
「ハリー、貴方……あの人の名前を呼ぶのね。驚いたわ、私も呼ぶからよく怒られちゃうの」
「そうだよ、アリアネも怖がらずに名前を言うからママ達が怒るんだよね。僕、あの人の名前を呼ぶ人見たの、アリアネとハリーで二人目だよ」
賞賛するように言うロンに、私はため息を吐く。
みんな、例のあの人のこと……ヴォルデモートの名前を呼ぶのを嫌っている。
呼べば『なんてこと!!』と目を見開いて、怒ってきた。
別に、呼んでも良いのに。
そう思っていた私は、怒られる度に不機嫌になったものだ。
「君の、君の口からその名を……」
「僕、名前を口にすることで、勇敢なとこを見せようっていうつもりじゃないんだ。名前を言っちゃいけないなんて知らなかっただけなんだ。わかる?僕、学ばなくちゃいけないことばっかりなんだーーきっと……」
「大丈夫よ、ハリー。これから沢山学ぶし、私も分からないことがあれば教えるわ。だから、私を頼ってね」
「ありがとう、アリアネ。そう言ってくれて、凄く嬉しいよ……。でも、僕はきっとクラスでビリだよ」
「そんなことないさ。マグル出身の子はたくさんいるし、そういう子でもちゃんとやってるよ」
うんうんと私は頷いて見せる。
ホグワーツにはマグル出身の人もいるし、私の母もマグル出身の魔女だったらしい。
でも凄く優秀な人だって、モリーおばさんやハグリッドや名付け親からも聞いていた。
「だから、大丈夫よ、ハリー」