第3章 不思議なみぞの鏡【賢者の石】
談話室のソファに腰掛け、暖炉の火へと視線を移した時である。
目の前にフレッドが現れてニヤリと微笑んでいる。
「あら、フレッド」
「やあお姫様。よい時間を過ごしたかな?」
「ええ。貴方も楽しい時間を過ごしたかしら?」
フレッドは『過ごしたさ』と笑いながら、私の隣に腰掛けた。
彼の体重に合わせてソファが音を鳴らして沈み、彼は私に少し近寄る。
「君に、渡すものがあるんだ」
「私に?何かしら」
「手を出して」
何かしらと思いながら、左手をフレッドに差し出す。
すると彼は私の手首にブレスレットを付けてから、小さく微笑む。
「·····ブレスレット?」
「メリークリスマス、アリアネ。僕からプレゼントだ」
ブレスレットはひも状のもの。
赤色と栗色の紐が編み込まれていて、真ん中には真っ赤な星型の飾りが付けられている。
綺麗で可愛らしいブレスレットに頬が緩むのを感じた。
「ありがとう、フレッド·····!すごく可愛らしいブレスレットね!」
「手作りさ」
「手作りなの!?やっぱり貴方、手先が器用ね!あ、私から何かプレゼントしなきゃ·····何がいいかしら」
彼にも何かをあげないと。
そう思って、彼にプレゼント出来るものは何があるだろうと悩む。
何か買うことが出来ればよかったのにと思っていれば、フレッドがにやりと笑うのが見えた。
何か、よからぬ事を企んでいる表情。
その表情に嫌な予感がして、少しだけフレッドから離れて座る。
「じゃあ、君からのキスとか」
「却下よ、却下。そうね·····あ、そうだわ!あげるのあったわね!」
私はローブのポケットからあるものを取り出した。
栗色と青色の紐が混ざったブレスレットのようなものを取り出すと、フレッドが首を傾げる。
「それはなんだい?」
「ミサンガよ。ちょっと前から作ってたの、これあげるわ。魔除けにもなるから、ほら、手を出して」
私はフレッドの手首にミサンガを付ける。
これは魔除けにもなり、幸福を招くものでもあり、フラメルの事を図書館で探していた時にミサンガの作り方の本を見つけ、興味があったので作っていたのだ。
「へえ、いいね!ありがとう、アリアネ。じゃあ、これと君からのキス·····」
「キスはしないって、何回言わせるの!そういうのは、好きな人としなさいよね!」
「うーん、手強いなあ、お姫様は」