第1章 ホグワーツ魔法魔術学校【賢者の石】
「ハリー、貴方はマグルの家で暮らしてたと聞いてたわ」
「ああ、うん。ひどいもんさ……」
ハリーの表情が暗くなる。
その表情から、あまりいい生活をしていないというのが伺えた。
「みんながそうだってわけじゃないけど。おじさん、おばさん、僕のいとこはそうだった。僕にも魔法使いの兄弟が3人もいればいいのにな」
「5人だよ」
「え?」
「ロンは、7人兄妹なのよ」
一番上にビルというお兄ちゃん、そして二番目のお兄ちゃんにチャーリーというお兄ちゃんもいる。
二人も私を実の妹のように可愛がってくれている、優しい人たち。
「ホグワーツに入学するのは僕が6人目なんだ。期待に沿うのは大変だよ。ビルとチャーリーはもう卒業したんだけど……ビルは首席だったし、チャーリーはクィディッチのキャプテンだった。今年はパーシーが監督生だ。フレッドとジョージはいたずらばっかりやってるけど成績はいいんだ」
ロンは嫌気が差したような顔をしている。
ホグワーツに入学が決まってから、ロンはこうして嫌そうに愚痴を吐いていた。
ウィーズリー兄弟は成績がよくて、優秀。
長兄のビルがそうだし、あとの兄たちもそうだからロンは嫌がり『僕も期待されるけど、期待はずれって言われるんだ』と言っていた。
「僕もみんなと同じように優秀だって期待されてるんだけど、もし僕が期待に応えるようなことをしたって、みんなと同じことをしただけだから、たいしたことじゃないってことになっちまう。それに、5人も上にいるもんだから、なんにも新しい物がもらえないんだ。アリアネは新しい物なのに……」
「まだそのことを拗ねてるの……?私は女だから、ビルたちの物は着れないのよ」
「それはそうだけどさあ……。僕の制服のローブはビルのお古だし、杖はチャーリーのだし、ペットだってパーシーのお下がりのねずみをもらったんだよ」
ほら……とロンは上着のポケットに手を突っ込んでから、太ったねずみを引っ張り出す。
だけどねずみ……スキャバーズはぐっすりと眠っている。
「スキャバーズって名前だけど、役立たずなんだ。寝てばっかりいるし。パーシーは監督生になっから、パパにふくろう買ってもらった。だけど、僕んちはそれ以上の余裕が……だから、僕にはお下がりのスキャバーズさ」
そこで、ロンが言葉を途切らせる。
恥ずかしくなったみたいで、耳元を赤く染めた。