第3章 不思議なみぞの鏡【賢者の石】
私の中で、スゥーと何かが冷えていくような感覚が現れた。
怒りが湧き上がるような、そんなものじゃない·····そう、これはセブへの軽蔑の感覚。
「僕たち、どうすりゃいいんだ?」
「私に任せて。アリアネ、一緒に来てちょうだい」
「·····え、ええ」
そこまでして、ハリーが邪魔で嫌いなのだろうか。
命を落とすかもしれない状況を作るなんて、そう怒りがふつふつと湧いてきた。
もう私の中で、セブへと軽蔑の気持ちが溢れて収まらない。
「ハーマイオニー、何するつもりなの?」
「呪文を唱えているのを邪魔するのよ」
ハーマイオニーと共に観衆を掻き分けていき、セブが立っているスタンドに辿り着くと、セブがいる一つ後ろの列を疾走した。
途中でクィレル先生とぶつかって、前の列に落ちてしまったけれど、今はクィレル先生に構う暇はない。
そして私とハーマイオニーはセブの背後に回る。
バレないようにしゃがみこんでいれば、ハーマイオニーが杖を取り出した。
そして言葉を小さく呟けば、杖からは明るいブルーの炎が飛び出して、セブのマントの裾に燃え移る。
「ハーマイオニー、貴方·····中々過激なことするわね」
「そうかしら?」
セブのマントはどんどん燃えていき、焦げ臭い匂いで気づいたのか、彼は自分のマントが燃えている事に気がついて目を見開かせていた。
そして鋭い悲鳴が上がった所で、ハーマイオニーは火をすくい取って空き瓶におさめる。
「行きましょう、これで大丈夫なはずよ」
「ええ、急ぎましょう。バレちゃう」
私とハーマイオニーは人混みに紛れ込んで、何も無かったようにしてロンたちがいる場所へと向かった。
セブには悪いことをしたかもしれない·····なんて、私の心にはもうそんな気持ちはない。
(なんで、あそこまでしてハリーを邪険にするのよ。命が危ない事までして!もう、セブに軽蔑したわ)
怒りと悲しさで心がゴチャゴチャになってくる。
そして、試合の方へと視線を向ければハリーは再び箒に跨っていて、箒もおかしな動きはしていない。
「見て、ハーマイオニー!ハリーがちゃんと箒に乗れてるわ!」
「やっぱり、スネイプが呪いをかけていたのよ!なんて卑怯な手を使うのかしら!」
「あ、急降下していく!」
ハリーは急降下していき、何故か手で口元をバチンと叩いた。
そして、何かを吐き出そうとしている。