第3章 不思議なみぞの鏡【賢者の石】
箒がおかしな揺れ方をしている。
まるで箒がハリーを落とそうとしているような、そんな動き方をしているのだ。
「ねえ、ハグリッド。ハリーの箒がなんだか様子がおかしいわ。変な揺れ方をしているの」
「なに?」
「ほら!」
空中をジグザグしたり、時々激しく揺れたりとおかしな飛び方をしている。
箒じゃなくてハリーがおかしな行動をしているのかと思ったけれどやっぱり箒がおかしい。
「スリザリンの攻撃です。クアッフルはフリントが持っています。スピネットが抜かれた、ベルが抜かれた。あ、ブラッジャーがフリントの顔にぶつかりました。鼻をへし折るといいですが、ほんの冗談です、先生。スリザリン得点です。あーあ·····」
そんな中で、皆はスリザリンの動きを気にしていてハリーの箒がおかしい事に気がついていない。
「いったいハリーは何をしとるんだ。あれがハリーじゃなきゃ、箒のコントロールを失ったんじゃないかと思うわな·····しかしハリーにかぎってそんなこたぁ·····」
「だから、ハグリッド!箒がおかしいって言ってるじゃない!」
「見て!ハリーが!」
ハーマイオニーがハリーを指さす。
そして観客もいっせいにハリーを指さしだした。
なんと、ハリーの箒がぐるぐると回りだしたのである。
「フリントがぶつかった時、どうかしちゃったのかな?」
「そんなこたぁない。強力な闇の魔術以外、箒に悪さはできん。チビどもなんぞ、ニンバス2000にはそんな手出しは出来ん」
「じゃあ、なんでハリーの箒はさっきからおかしいのよ·····。誰か、ハリーの箒に呪いをかけているんじゃ·····」
私が、そう呟いた時である。
ハーマイオニーはハグリッドから双眼鏡を奪い、選手ではなく観客席を見ていた。
そんな彼女に、ロンが真っ青な顔して呻く。
「何してるんだよ」
「思った通りだわ。スネイプよ、見てご覧なさい」
ロンはハーマイオニーから双眼鏡をもぎ取り、向かい側にいるセブを見ている。
そして私もロンから双眼鏡を引ったくり、セブを見れば何か呪文を唱えていた。
「何かしてる。箒に呪いをかけてる」
「嘘でしょう·····」
信じたくはなかった。
でも、たしかに双眼鏡の向こう側にいるセブはハリーに向かって何かを唱えている。
そしてハリーの箒は制御不能なぐらいに動いていた。