第3章 不思議なみぞの鏡【賢者の石】
その度に、壁は棍棒で破壊されていく。
すると破壊され壁の破片がこちらへと飛んできて、私の頬を切った。
「いっ·····!」
鋭い痛みに顔を歪ませ、頬に触れるとぬるりとしたものがつく。
切った所から血が溢れていて、手には真っ赤な血がついていた。
「アリアネ!?大丈夫なの!?」
「だ、大丈夫よ、ロン。それよりハリーが危ないわ」
頬から流れ出した血を、手の甲で拭いながらも私はある呪文を思い出した。
「効けばいいのだけれど。インセンディオ(燃えよ)!」
すると杖から炎が溢れて、勢いよく炎が舞がるとトロールの肌を焼いた。
「凄いや、アリアネ!」
「あ、逆効果だったわ!!」
でもそれは逆効果。
トロールは肌が焼けた痛みでもっと暴れだしたのである。
これでは余計ハリーが危ないと焦っていれば、ロンが叫んだ。
「ウィンガーディアム レヴィオーサ!」
今日習ったばかりの呪文をロンが唱えた。
すると棍棒がトロールの手からふわりと飛び出すと、空中を高く舞い上がったかと思えば一回転してトロールの頭を落ちたのである。
「あ·····」
そして、当たり所が悪かったのだろう。
トロールはその場にうつ伏せになって倒れ、倒れた衝撃で部屋中が揺れる。
「·····倒れたわね」
ハリーがゆっくり立ち上がり、私と一緒にトロールを覗き込む。
ロンはというと、杖を振り上げたまま突っ立っている。
「これ·····死んだの?」
震えた声で、ハーマイオニーが呟く。
「いや、ノックアウトされただけだと思う」
ハリーはトロールの鼻から杖を引っ張りだすと、見たくない気持ち悪いのがついていた。
「ウエー、トロールの鼻くそだ」
ハリーは気持ち悪そうにトロールのズボンで拭き取ると、私を見てギョッとした顔になる。
「アリアネ!頬から血が出てる!!」
「あ、うん·····飛んできた瓦礫で切っちゃったの」
頬はさっきから鈍い痛みを知らせてくる。
そしてゆっくりと血が伝ってくるのが分かり、手の甲で拭ぐえばベッタリと真っ赤な血が付着した。
あとで、医務室に行かなきゃいけないかなと思っていれば、騒がしい足音が聞こえてくる。
あれだけの大騒動に、トロールの唸り声、物が壊われる音がしたのだから、人が音を聞きつけて来るに決まっている。