第2章 小豆娘
「まぁ、そんなとこだ」
「へぇ〜!どんな方なんですか?」
「…昨日会ったばかりでよく分からない」
「ぇえ⁈えっと…、歳上ですか?それとも歳下?」
「俺と同じくらいか少し下の女子だ」
「昨日知り合った女の子にもう手ぇ出したってことですかぁ⁈顔が良けりゃぁ何しても許されるとか思わないでくださいよぉ⁈」
「出してない」
ぐるぐる巻きの嘴平の縄を解いていた我妻が、突然俺と炭治郎の間に割り込んできた。
縄はまだ巻かれたままだったので、どうやら諦めたらしい。
しかし、なぜ我妻はこんなにもキレているのだろうか。
「義勇さんに失礼だろぉ善逸ー!!」
「ヘブォッ…!」
烈火の如く怒った炭治郎が我妻を平手で張り飛ばす。
ぶたれた我妻は嘴平と一緒に道端に倒れた。
少々失礼だなと思っていたので、炭治郎が代わりに怒ってくれて、俺はとても嬉しい。
「では続けましょう!義勇さん!」
「……」
まるで何事もなかったかのように話し出す炭治郎。
俺に向けた笑顔は非常に爽やかだった。
「それじゃあ、その人は可愛いですか?それとも綺麗ですか?」
「……可愛い、だろうか」
「可愛い方なんですね。じゃあ次は、優しそうな人ですか?それとも怖そうな人ですか?」
謎なぞみたいになっている…。
「…鼻緒が切れてしまっていて、応急処置で俺が直した。随分と不格好になってしまって歩きずらかっただろうに、俺にありがとうと礼を言った。素直で、優しいのだと思う」
「そんな事があったんですねぇ…あれ?義勇さん、今何かお菓子とか持ってたりしますか?」
「いや、持っていないが?」
「そうですか。なんだか義勇さんから甘い匂いがしたので……、いえ、なんでもありません!」
「?」
なんだかすごく焦っているような炭治郎。
なんだろうか。
「あぁ!それで草履を見ていたんですね!」
はぐらかされた気がする…。
だが炭治郎は言わないつもりらしいので、俺も追求するのはやめておこうと思う。
気にはなるが…。
「そうだったんだぁ。分かりました!義勇さんと歳が近くて、可愛らしくて、素直で優しい方ですね。俺もその雰囲気で探してみます!」
頼もしい弟弟子だ。
こういう、女性への贈り物とやらには疎いので、一緒に選んで貰えるのは有難い。