第2章 小豆娘
それでさっきからちまちまと拾っているのか。
しかし、一人で拾い切れるだろうか。
ここは人が行き交う大通りだ。
先程から見てるとここでしゃがみ込んでいるので、若干通行の妨げになってしまっている。
何人かでサッと拾ってしまった方がいいと思うのだが、生憎今は皆手が空いていないようだ。
…では、俺も手伝おう。
という結論に辿り着いたので、口より行動の俺は何も言わずに一緒に小豆を拾い始めた。
今度は、何なんだこいつ、という顔を向けてくる。
「あの、…何してるんですか?」
そして、思った通りの疑問を投げかけてきた。
「見れば分かるだろう。小豆を拾っている」
「それは分かりますけど…。なんでそん「ここは人通りが多い」
今俺は手伝っているのだから文句を言うな。
口より手を動かせ。
言ってないのだから伝わるはずがないのだが、分かってくれよという思いが強めに出てしまって、相手が言い終わる前に言葉を被せてしまう。
「こんなに広げていたら迷惑だ。さっさと片付けるぞ」
俺が更に続けると
「……はい」
やけに小さな返事が返ってきた。
初めは気にしていなかったのだが、それでもと思い横目でちらっと窺うと…
俯いて、目元をゴシゴシと袖で拭いていた。
俺は…また間違えたのかもしれない。
泣かせてしまった…
俺の言動で不死川と伊黒をよく怒らせてしまうが、この娘ももしかしたら何か不快にさせてしまったのだろう。
さっきの自分の言動を思い返してみるが、今思えば酷い言い方だった。
『そんなんだから、皆に嫌われるんですよ』
いつだったか、胡蝶に言われた言葉が再び俺に突き刺さる。
これを拾い終えたらもうさよならだ。
二度と会う事もないだろう。
嫌われようがなんだろうが構わないのだ。
それなのに…なぜだろうか。
今の俺は、この娘に嫌われたくないと思っているようだ。