第1章 私の妄想
「あのっ!お礼、したいから。今度また…また会えますか…?」
「……いや。今回のことなら気にしなくていい。」
「えっと、、その、また会いたいんです!私が!じゃなくって、なんていうか絶対お礼をしないと気が済まなくて…!!」
(むりむりむり!今のは無理あるって私!!!変なやつだと思われちゃった…)
「…そうか。それなら、ありがたく受け取らせてもらおう。」
「ありがとうっ!!!」
私は嬉しくなって浮かれていた。
名前は聞いたのに、、連絡先を聞いてないなんて。。
病院で足の怪我の手当てをしてもらいその日は無事に家に帰ることができた。
ーーー
「はぁ、、、なんで私って肝心なところで」
今日の任務もそうだ。
初めは私が優勢だった。
しかし一瞬巨大な渦のようなものが見えてそれに気を取られてしまったのだ。ひとつのことに集中してしまうと他のことが見えなくなってしまう。
悪い癖だ。
「でも、危機的状況の吊り橋効果的なやつ…ってこともあるもんね…」
自宅で独り言をぶつぶつ呟きながら読みかけの本を手に取る。
【幼馴染と恋】
安直なネーミング。
しかし私は恋愛小説が大好きだ。
特にこういう幼馴染と、とか久々の再会、とか運命的な出会い、とか、、、まぁなんでも好きかな。
もしもセイヤがお隣に住んでたら…
なんて妄想をはじめてしまう。
今日のは完全に一目惚れ。
なにより顔がタイプなのだ。
真っ直ぐな瞳、素早い判断に圧倒的な強さ。
何をとっても完璧だった。
ハンターになる時、人を守る強さを持つって誓ったのに。
そのために訓練も頑張ってきたのに。
「やっぱり守られるのって、憧れるよなぁ。」
適当に目を通しただけの小説を机に戻しベッドに寝転ぶ。
「セイヤ…また会えるかな…」
私はセイヤの夢を見られますように、と星に願いを込めて
目を閉じて、自分の思い通りの物語を頭に浮かべる。