第4章 勇気
「コーヒーを淹れた。頭がスッキリする。」
「あの、私は眠くないよ。」
「あぁ、砂糖とミルクが欲しいのか。」
そう言ってセイヤは私の目の前にお砂糖の入れ物とミルクを用意してくれる。
「ありがとう…いただきます。」
「……苦いな。」
セイヤはぼそっと呟いてお砂糖をカップにそっと入れる。
「それで、今日はどうしたんだ?また、クレーンゲームをしに行くのか?」
「えっと、そうじゃなくて。今日は急に来てごめんなさい。私、あなたに何か気に障ることしてしまったのかなって…もしそうなら謝りたくて。」
「…?なにもないが。どうしてそう思うんだ?」
先日から数日間ずっと返信がないことを告げると、セイヤは目を丸くしてスマホを確認する。
「すまない。…見てなかった。」
「へ…?」
ポカンとしているとセイヤはバツが悪そうに自分の首の辺りを触った。
「だから、つまり…寝過ごしたんだ。この数日間を。」
「えっ、そんな!どこか具合が悪いんじゃーー」
「心配ない。よくあることだ。気がついたら何日か過ぎている。あんたはないのか?」
「なっ!ないよ!そんなに寝ることなんて…!でも…よかったぁぁ」
安心して少し涙が出る。
「どうした?目が赤いぞ。」
「だって、私…セイヤに嫌われちゃったのかと…」
「そんなはずはない。俺はあんたが好きだ。」
顔が一気に熱を帯びるのを感じる。
「えっ…」
「いろんな表情を見せてくれる。話がコロコロ変わるのはついていくのが大変なこともあるが…飽きなくて良い。」
「…っ!」
「俺はよく1日を寝て過ごすんだ。不満はないが何にもしない日があるのは事実だ。だが、あんたに会うと目まぐるしく忙しく1日が終わる。そんな日が俺の人生にあっても良いなと思うようになった。俺はあんたに会うのを楽しみにしている。」
嬉しくて驚いて
ゆっくりひとつひとつ丁寧に話すセイヤの言葉にいちいち感動して。
不安があった反動か、涙がポロポロ落ちてくる。
「…どうして泣いているんだ。」
「…っ、う、嬉しくて……っ!」
「嬉しかったなら、笑って欲しい。俺はあんたの笑顔が特に好きだ。」
セイヤは恥ずかしがる様子もなく言葉を淡々と紡ぐ。
優しく頭に手を回されぎゅっと引き寄せられる。
セイヤの心臓の音が耳に直接流れてくる。