第5章 知恵者グレーテル〜旦那が勝つか私が勝つか?
「えー?捨てんの?もったいないー。ほら、SDGSとかいうじゃん。食べなよ?」
健太は平気でそんなことを言ってくる。
「あのね、お腹に子供いるんだよ?こんな濃い料理なんてあげられないよ?わかってんの?お母さんのお腹の中で赤ちゃんは栄養をもらってるんだよ?責任取って健太が食べなさいよ。」
「はぁ?作ったのは千郷なんだから自分が食べればいいじゃん。」
健太には文句を言われたけれど流石に味の濃いものは受け付けずに捨ててしまった。
神様ごめんなさい・・・許して・・・。
翌日から私は家で休む時間が増えた。本当は実家に帰ればよかったんだけど、実家が遠くて帰るにも帰れずにいた。両親も共働きで忙しそうだしな。だから電話もかけにくかった。
「おい、起きろよ!」
「えっ?あっ、帰ってたんだ。」
健太の声で目が覚める。気がついたら夕方になっていた。
「たっくーー夜早く寝たらいいんじゃねーの?寝る時間なんてたっぷりあんだろが?ってか夕飯は?掃除もできてねーじゃん。」
「ごめんなさい。なんか疲れてて。」
「いいご身分だよなー。そりゃ、千郷が働いてた時は多めに見てやったけど家に1日中いるんなら掃除も料理もやっておけよな?」
「仕方ないじゃない。だってー。」
私がそう言いかけると健太はため息をついて言った。
「あーそうですか?つわりつわりって妊婦様々なアピールなんていい加減にしてくれよ?」
「誰の子供を妊娠したと思ってるの?そりゃ、寝過ごして悪かったわよ。今から作ります!それでいいんでしょ?」
「今からなんておせーよ。もういい!俺は外で食べてくるからな。」
健太はイライラして家を出て行った。
私だってイライラしていたけれど健太が外に出てくれたおかげで気持ち的に楽になった。