第5章 知恵者グレーテル〜旦那が勝つか私が勝つか?
人がつわりで苦しんでる時にいちゃもんつけてイライラしてるのはどこのどいつなんでしょうか?
この日を境に私は健太に対して笑顔をなくしていった。一緒にテレビを見ようよと誘われても気持ち悪くて断ったりする。お風呂に一緒に入らないかと言われても断り続けた。しかし、そんな私の態度を見て面白くなかったのか健太は不貞腐れてさっさと寝室にこもってしまった。
翌日、健太が仕事に出掛けて私もスーパーに出かけた。
つわりがひどくなってきたのでお惣菜の仕込みは今日で一旦最後。私は気合を入れて作ることにした。他の店員にもテキパキと指示を出してお惣菜を作る。立っているのがしんどいので座りながら作った。
そして家に帰って夕飯作り。本当は夕飯なんて作りたくない。なんであいつのために作らなきゃいけないの?しかも昨日なんかウスターソースじゃなくておたふくソースにしてよなんてリクエストされて・・・・。
「私はあんたの家政婦じゃないんじゃい!!!!」
つい叫んでしまってハッとする。
「ごめんね、ベビちゃんに言ったんじゃないのよ。」
お腹の子に話しかけるように手でさすりながら料理を渋々作った。
どうせ、前みたいに私の作ったお惣菜なんか食べてくれない。それなら最初からソースかけちゃえ。私のとは別に作るのは大変だったけどなんとか作り終えた頃に健太が帰宅。
「ただいまー。夕飯できてんの?ってなにこれ?」
「これが望みなんでしょ?ソースが好きなら最初からかけてれば?」
「俺の好きにかけさせてくれよー。そっちのソースがかけてあるのは千郷が食えよ?俺は新しくソースかけなおすから。」
「あのねぇ、わざわざ気を利かせてソースかけてあげたんでしょ?同じことじゃない?なんなのよ。こっちはつわりと闘いながら料理してんのよ?貧血とか眩暈とかあんたにはわかんないでしょうけどお腹の中に命を抱えてんのよ。実感湧かないのは仕方ないけど少しは協力してよ。パパになるんでしょ?」
私は悔しくて涙がこぼれながら必死に訴えた。
なのにー?
健太には響かなかったらしくソースのかかってない方の皿を掴んでソースをかけて食べ始めた。
何がいけなかったのだろうか?そしてソースをかけて仕込んだ料理は私には食べられずに捨てることになった。