第5章 知恵者グレーテル〜旦那が勝つか私が勝つか?
サラダってドレッシングかけてあるのに何でわざわざソースをかけるんだろう?そういえばこの前、味噌汁にもソースかけてたっけ?まぁ、自分の分だけにかけてたからいいけど私にまで異論唱え出してソースかけられたらたまったもんじゃないわ!
何か対策を立てないとー。それに健太さんはいつも口癖のように言う。
関西人はソースが好きだからとか、お好み焼きやたこ焼きを毎日、食卓に出してもいいんだよ?とか。
いやいや、粉もんばっかり毎日食べてたらぶくぶく太るでしょうが!!!
それからしばらくして私の妊娠が発覚した。スーパーの店長と話し合って私ができるだけパートの店員の何人かにお惣菜の味付けや料理の仕方を教えてあげた。みんな、ちゃんとメモを取って聞いてくれたのが嬉しかった。
しかしその反面、つわりと戦わなければならなかった。あんなに好きだった中華も食べられなくなり、ごま油の匂いだけで吐き気がする。
しかも炊き立てのご飯の匂いもダメになって夕食作りは苦戦を強いられていた。私がつわりでご飯の匂いやごま油がダメだと健太さんに伝えると不満そうにテーブルを叩いてきた。
「そんなの甘えだよ?つわりは病気じゃないんだからさ?炊き立てのご飯をせめて用意くらいできない?簡単なことじゃん?最近いつもおかずが少ないし手抜きだか知らないけど冷凍食品だし、どうしちゃったの?スーパーでお惣菜作れるならうちでも作ってよ。」
この言葉にイラッとしたけど心を鬼にして冷静になって言葉を返した。
「それはすみませんでしたねぇ。でもこちらの事情も汲み取って頂けるとありがたいんですけど。そんなにご飯が食べたいならスーパーで買ってきたらどうですか?あっ、なんなら私の作ったお惣菜を買っていけばいいじゃない?」
「ダメだよー。出来立ての夕飯が食べたいのにお惣菜を買ってレンチンするの?無理無理ー!」
いやーこっちとらあんたのその態度が無理なんですけどね。私の顔はいつになく引き攣っていたのに、健太は気がついていない。
もうこの際だから呼び捨てにしますけど?あんたの神経どうなってんの?