第10章 気になるあの子
席に着くようにと呼びかける飯田の声が、ぼんやりとした結の頭に響いた。
視界がぐらつく中、教室の風景は目を閉じる前とは違い、多くあった空席がクラスメイトによって全て埋め尽くされていた。
時計の針はホームルームが始まる直前まで進んでいる。
焦りが胸をよぎり、結は少しでも隈が消えているようにと願いながら目元を擦って眠気を追い払おうとした。
瞬きを繰り返し、ぼんやりとした視界がようやく明瞭になったとき、教室の扉が開く音が耳に届いた。
「おはよう」
その声に、寝惚けていた結の頭が一瞬で覚醒した。
声の主は相澤に違いないが、扉の前に立っていたのは見覚えのないミイラ男だった。
リカバリーガールに怪我を診てもらったものの、今朝よりもさらに包帯を増やされてしまったのだろう。
相澤は怪我の具合が悪化しているように見え、彼の早すぎる復帰に驚きと戸惑いを隠せない生徒たちの視線が集まった。
相澤はよろめきながら教卓に近づき「まだ戦いは終わってねぇ」と不安を煽るような言葉を投げかけた。
まさかまだ敵が潜んでいるのかと、怯える生徒たちの様子が教室内に広がる。