第15章 弱さに宿る力
短い間の眠りの中で結の意識は突如、太ももに感じた衝撃で夢の世界から断ち切られた。
何度も繰り返し叩かれる感覚に夢と現実の境界がぼやけていく。
夢の余韻を引きずったまま伝えられた予定に、結は一瞬言葉を失い、顔色を曇らせる。
飯田との戦いが実現せずに順位が決まったことが胸に重くのしかかっていた。
競技場に到着すると、そこにはすでに大勢の生徒たちが集まり、背後には取材陣が無数のカメラを構えていた。
照準を合わせるレンズの数が肌を刺すような緊張感を生む。
結は自分の順位が刻まれた台へ向かい、一番低い台に足を乗せた。
「それではこれより、表彰式に移ります!」
大勢の視線が注がれる中、勝者として名を連ねた三人が揃う。
だが、その場に漂う空気はどこか異様だった。
「ん゙ん゙ー!!!」
一位の爆豪は勝利者としての堂々たる姿ではなく、つけられた口枷から声を上げ、縛られた体を激しく揺らしていた。
鎖が引き絞られる音は止まず、台がわずかに揺れる。
対照的に、二位に立つ轟の横顔には感情の伺えない影が落ち、結は吐き出せない感情を胸の奥に押し込んでいた。
「さあ、メダル授与よ! 今年メダルを贈呈するのは、もちろんこの人!」
飯田の事情を説明し終えたミッドナイトの声に合わせてオールマイトが現れる。
屋根の上から飛び降り、体を回転させながら着地する派手な登場。
しかし、肝心な決め台詞はミッドナイトの声に重なってしまった。
声のズレに気づいたオールマイトは一瞬だけしょんぼりとした様子を見せたが、すぐに気を取り直してメダルを手に取り、結に歩み寄った。