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お友達から始めよう【ヒロアカ】

第8章 孤独を満たす


 外で鳥たちが元気にさえずり始める頃。
 結は風呂を終え、じくじくと痛む右手を押さえながら、空の鎮痛剤のシートをゴミ箱に投げ入れた。

 昨日の敵襲撃事件によって、学校は臨時休校となり、再開は明日になると連絡が入っていた。
 相澤はまだ帰っていない。
 玄関先で彼の帰りを待つ時間が長く続いていたが、その期待も次第に精神的な苦痛に変わりつつあった。


 台所には今朝のホットミルクのために使い切った牛乳パックが逆さに干されている。
 結はそれを見つめながら、気晴らしが必要だと感じていた。
 部屋の電気を消し、最低限の物をポケットに入れて、扉の鍵を閉める。
 薄暗い部屋を後にしながら、外の世界に心を寄せた。

 学校とは反対の方向に歩を進めると、徐々に馴染みのスーパーマーケットが視界に入ってくる。
 慣れた足取りで売り場に向かい、右手の不便さを感じながらも、目当ての物を手に取って会計を済ませた。


「停止女」


 自動ドアを通ると同時に、聞き覚えのある声が響いた。
 目の前に立っていたのは、半袖シャツと半ズボンのラフな格好をした爆豪だった。

 驚きの表情を浮かべる結とは対照的に、爆豪は眉をひそめながら近づいてくる。
 彼の片手には、大きなレジ袋がぶら下がっていた。


「テメェ、怪我してンのに何外出てんだ」
「牛乳が切れちゃったから……」
「水使えや」
「忘れないうちに買っておこうと思って。爆豪くんこそ、どうしてここに?」
「見りゃわかんだろ。ババアに命令された昼飯と晩飯の使い」


 結は驚きながら爆豪の言葉を耳にする。
 お使い手伝う人なんだと問い返すと、彼は不快そうに訂正した。


「あ? ちげーよ、母親」
「は、母?」


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