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お友達から始めよう【ヒロアカ】

第8章 孤独を満たす



「君の右手のこと、彼から聞いたよ。名前は……緑谷くんだったかな。大怪我だから医者に見せた方がいいってさ。彼も両脚骨折の重傷者なんだけどね」
「緑谷くん、大丈夫なんですか……?」
「ああ、リカバリーガールの治療で間に合うらしい」
「よかった……」


 苦笑まじりの言葉とは裏腹に、その表情には心配と呆れが入り混じった色が浮かんでいた。
 緑谷の容態に問題はないと聞き、結はわずかに息をつく。
 そして、震える右手を押さえながら、声を絞り出した。


「……あの。消太さん……イレイザーヘッドの、怪我は」


 掠れた声で名を呼ぶ。
 塚内はルームミラー越しに結の表情を確かめた。
 幼さの残る瞳には、恐怖と祈りが折り重なっていた。


「知っている範囲だけ話すよ。……命に別状はない。ただ、両腕は粉砕骨折、顔面にも骨折がある。脳に損傷はなかったが、眼には何らかの後遺症が残る可能性があるそうだ」
「後、遺症……」


 結の胸から色が引いていく。
 呼吸が浅くなり、心臓がぎゅっと縮む。
 取り返しのつかない現実の気配が、冷たく背筋をなでた。


「大丈夫、失明したわけじゃない。あれほどの状態で、後遺症だけで済んだのは、不幸中の幸いだ」


 言葉には慰めだけでなく、結の心を守ろうとする確かな温度があった。
 結は俯き、震える唇を固くむすんだ。
 こぼれそうになる涙を堪えながら、痺れる左手で胸を押さえた。


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