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お友達から始めよう【ヒロアカ】

第7章 酷悪


 警察と救急隊が現場に到着すると、生徒たちは安否確認のために屋外へと誘導された。
 静まり返った施設からは、戦いを終えた緑谷や爆豪たちが次々と姿を現す。
 重傷を負った相澤と13号はすでに搬送されており、痕跡だけが地面に残っていた。

 ざわつく人々の中で爆豪はふと、人混みの外れに一人で佇む結の姿を見つけた。
 羽織っていたカーディガンの裾には、乾きかけた血が色濃く染みついている。
 時間の経過を無視してなお、それは生々しく目に焼きついた。


「おい、停止女テメェ――」


 思わず怒鳴りかけた爆豪の言葉は、喉元で止まった。
 飛び降りたときの無謀さを責めるつもりだった。
 だが、その表情を見て声が続かなかった。

 結の顔は血の気が失せ、今にも倒れそうなほど青ざめていた。
 目元には薄く涙の痕が残っている。


「なんで、ンな顔してんだ」


 怒りはかき消え、代わりに生まれたのは戸惑いだった。
 爆豪が小さく呟くと、それを合図に結の頬からまた一滴の涙が滑り落ちた。


「……どうしよう」


 震える足取りで爆豪の前まで来た結は、かすかに震える左手を伸ばして彼の腕に触れた。
 指先は氷のように冷たく、爆豪は思わず身を引きそうになるが、引かなかった。
 その手が何を求めているのかを理解してしまったからだ。


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