第2章 本気の裏側
昼前の日差しが校舎の隙間から柔らかく差し込み、運動場を暖かく照らしている。
体操服に着替えた結は少し急ぎ足で運動場に向かった。
すでに数人の生徒が集まっている中で、数分前に別れたばかりの切島を見つける。
結が切島に近づくと、彼も結を見つけて微笑んだ。
「あのやる気なさそうな人が先生、しかも担任か……。着替えてグラウンド集合ってことは走ったりすんのかな?」
「体力テストとかやるのかも。急だよね」
「まだクラスの奴らに自己紹介も済んでねぇのにな。そういや、千歳さっき驚いてたけどよ、先生のこと知ってるのか?」
「え、み、見たことあるヒーローだった、から」
「そっか! あんな見た目でもプロのヒーローなんだよな……?」
二人の話題は、運動場の端で左右のポケットに手を入れ、鋭い目つきで生徒たちを観察している男について。
無言で立ち尽くす彼の容姿には、プロのヒーローとしての要素がほとんど感じられない。
切島が疑いを持つのも無理はなかった。
体操服に着替えた最後の生徒が到着すると、相澤は全員を一か所に集めた。
周囲の静けさを切り裂くように、低く落ち着いた声で話し始める。
「今から個性把握テストを始める」
「個性把握テストォ!?」
「入学式は!? ガイダンスは!?」
「ヒーローになるなら、そんな悠長な行事出る時間ないよ」
突然の開始宣言に驚きと混乱の声が上がる。
麗日は思わず不満を表すが、相澤は冷静に的確な指摘を返した。
肩を落とす麗日に、周囲の緊張感が一層高まり、生徒たちは無言で身構えた。
相澤はテストの内容を簡潔に説明し、爆豪から中学時代のソフトボール投げの記録を聞き出すと「個性を使って思いっ切りやってみろ」と球を投げ渡した。
爆豪はその球を片手で受け取りながら、にやりと不敵な笑みを浮かべる。
軽い準備運動を終えると、爆豪は地面に描かれた白い円の手前に立つ。
そして、重心を低くし、腕を大きく振りかぶった。
「死ねえ!!」