第7章 酷悪
「――ごめんよ、皆。すぐ動ける者をかき集めてきた」
長い階段を上った先で、重く閉ざされた扉が、ゆっくりと音を立てて開かれる。
雄英高校の校長、根津の姿が現れると、後に続いて教師陣やプロヒーローたちが、施設内へ雪崩れ込んだ。
「1-Aクラス委員長、飯田天哉!! ただいま戻りました!!」
響き渡る力強い声。
施設から雄英まで、長く果てしない道のりを懸命に走り抜けた飯田が、凛とした面持ちで立っていた。
沈みかけた船が再び帆を上げるかのように、希望が生徒たちの胸に芽吹く。
蛙水と峰田は、麗日の個性を頼り、相澤を慎重に運搬し始める。
その間に緑谷はオールマイトのもとへ駆けていった。
それぞれが己の判断で動き出していた。
血に染まった相澤の姿が、教師たちの手によって施設の外へ運ばれていく。
その光景が奇妙なほどゆっくりと映った。
「……結ちゃん」
不意に背後から呼びかけられ、結ははっと我に返る。
振り返った先には、プレゼント・マイク――山田ひざしが立っていた。
彼の瞳には、優しさと悲しみが混ざり合っていた。