第7章 酷悪
「ひざしさん、ごめんなさい……私……」
「大丈夫だ、結ちゃんは何も悪くねェ。よく頑張った。謝ることなんて何もねェよ」
言葉にできない悔しさが、喉を詰まらせる。
震える声で謝罪を絞り出す結の肩に、マイクの大きな手がそっと置かれた。
優しく結を包み込むが、胸の奥に染みついた無力感や罪悪感は、すぐには拭えなかった。
一方で、顔に手の装飾をつけた男は、黒い靄とともに退却を始めていた。
その動きを、プロヒーローのスナイプは逃さなかった。
鋭い銃声が響き、放たれた弾丸が男の肩を貫く。
「今回は失敗だったけど……今度は殺すぞ。平和の象徴、オールマイト」
肩を押さえ、男は憎悪に満ちた言葉を吐き捨てる。
黒い靄が周囲を包み込み、彼は跡形もなく消えていった。
怒声と爆音に満ちていた建物に、ようやく静けさが戻る。
この日、彼らが目の当たりにした現実は重く、ヒーローを夢見るにはあまりにも残酷だった。
そして、まだ誰も知らない、さらなる試練が彼らを待っていた。