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お友達から始めよう【ヒロアカ】

第7章 酷悪



「あ、ありがとう」
「さっさとトドメ刺せや、ザコ女」
「女子に対してそーいうこと言うなって……千歳、怪我してねえ? 大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ」


 爆豪の声音には、冷淡とも無関心とも取れる響きがあった。
 一方で、切島はそんな態度に呆れたように息をつき、気遣いを隠さない明るい声で結をのぞき込んだ。


「っし! なら、早く皆を助けに行こうぜ! 俺らがここにいることからして、皆USJ内にいるだろうし!」


 だが、その言葉は二人の耳には届かなかった。
 結も爆豪も、互いに違う方角に視線を据え、揺らぎのない意思を瞳に宿している。
 焦る切島とは対照的に、静かな決意だけが場に沈んだ。


「行きてぇなら一人で行け。俺はあのワープゲートぶっ殺す」
「はあ!? この期に及んで、そんなガキみてぇな――」
「切島くん、ごめんね。私も行く場所があるから」
「ちょ、ちょっと待て! お前ら自由すぎるって!!」


 二人の意志は揺るがなかった。
 そのとき、空気がひりつくような緊張が走る。
 爆豪の背後、瓦礫に埋もれていた敵がぎしりと立ち上がり、落ちていた刃物を拾い上げた。
 狙いはもっとも無防備に見える結だった。
 しかし、爆豪は視線すら向けずに左手を振り下ろした。
 爆破が敵を包み、悲鳴の暇すら与えず沈黙させる。


「つーか、生徒に充てられたのがこんな三下なら、大概大丈夫だろ」
「あ、ありがとう。よく気づいたね」
「お前、そんな冷静な感じだっけ? もっとこう……」
「俺はいつでも冷静だ、クソ髪野郎!!」
「ああ、そっちだ」


 切島はほっと胸をなで下ろした。
 爆豪は篭手を乱暴に直しつつ、鋭い目で周囲を探る。
 隣では結が左手をひと振りして、すでに気持ちを切り替えていた。


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