第7章 酷悪
「俺が全員ぶっ殺す」
「物騒だけど男らしいな。俺も加勢するぜ、爆豪!」
「俺一人で十分だわ。んで、テメェは戦えんのかよ、停止女」
「停止女じゃなくて千歳だけど……自分の身は自分で守れるよ。ありがとう、心配してくれて」
「あっそ」
爆豪は結が戦えると分かるや否や、何も言わず敵へと駆けた。
瞬間、閃光と轟音が室内を揺らし、爆豪の爆破が敵の列を乱す。
崩れた隙に切島が飛び込み、硬化した拳が鋭く敵を弾き飛ばした。
わずかな間を縫うように、一人の敵が結へ迫る。
油断しきった顔で刃物を振りかざす姿が視界に入った。
結は足元の瓦礫を拾い、左手に力を込めた。
静かに呼吸を整え、狙いを定める。
「へっ! 目に見えて分かるダセェ罠、引っかかるヤツがいるわけ――」
瓦礫は空中で軌道をねじ曲げた。
不可解な動きのまま、敵の服に当たる。
破片が散ると、敵の身体がぴたりと止まった。
「な、何しやがった……!?」
動きを封じられた仲間を見て、別の敵が目を剥く。
震えた手で拳銃を構え、結に狙いを定めた。
結は再び瓦礫を拾い、ぶれのない動きで投げつけた。
破片が銃を弾き、金属音を残して床に落とす。
その間に、敵は彫像のように動かなくなった。
「……どうやって倒そう」
「これで全部か」
無力化しただけで終わりではない。
氷で封じるか、拘束か。
そんな選択肢が頭の中を巡っていると、ふいに結の右手の上へ爆豪の手が重なった。
驚くより早く、爆豪の個性が炸裂する。
閃光と熱が空気を揺らし、視界が白く弾けた。
煙が薄れたときには、敵はすべて気を失って倒れ込んでいた。