第7章 酷悪
報道陣による騒動から丸一日が過ぎた。
午後の授業では、人命救助を目的としたヒーロー基礎学の訓練が控えている。
指導にあたるのは相澤、スペースヒーロー・13号、そしてオールマイト――の予定だった。
オールマイトは移動中に限界まで力を使いきってしまい、現場到着が遅れるという。
その事情を知らされているのは、緑谷だけだった。
訓練場は校舎から離れているため、生徒たちはバスで移動する。
新たに学級委員長となった飯田は、整然と列を作ろうと声を張りあげたものの、座席配置を見て肩を落とし、結局は自由席のまま乗り込むことになった。
バスを降りた瞬間、視界に広がった光景に思わず声が上がる。
「すっげー!! USJかよ!?」
広大な敷地に、災害や事故を模したステージがいくつも並んでいた。
あらゆる状況を想定した訓練ができるこの施設は、“ウソの災害や事故ルーム”――略してUSJと呼ばれている。
「えー、始める前にお小言を一つ、二つ……三つ、四つ……」
「増える……」
13号が前へ進み出て、穏やかな声で語り始めた。
彼女の個性は“ブラックホール”。
物を吸い込み、塵へと還してしまう力だ。
その一瞬の誤りすら命取りとなる危険性もあるが、同時に多くの命を救える。
個性は誰かを傷つけるためのものではなく、守るためにある。
13号の言葉は温かく胸に沁み入った。