第6章 波乱の一日
「俺さぁ、気づいたら昇降口の近くまで流されててさ! 落ち着いた頃にやっと立ち上がったら千歳も切島もいなくて! お前らどこにいたんだよ……!」
上鳴は肩を落とし、まるで迷子になった子供のような表情で二人に問いかけた。
その声には少しの不安と、取り残された寂しさが混ざり合っている。
普段の明るさが影を潜め、結と切島が見つからなかったことに対する焦燥感を抱いていた。
「食堂からそんなに離れてなかったはず……私も流されそうになったけど、切島くんが助けてくれて」
「悪ぃ、上鳴! お前だけ流されちまってよ……でも、無事でよかったぜ!」
「俺の心は無事じゃねぇよお……!」
切島の声には自分の失敗を悔やむ気持ちがにじんでいたが、上鳴は大げさに肩をすくめながら、どこか悲しげな声で答えた。
二人のやり取りは一見軽く見えるが、その背後には絆が流れていた。
今回の騒動は、何者かがセキュリティ門を破壊し、雄英高校の敷地に侵入したことで起こった騒ぎだった。
学校の平和が突然破られ、生徒たちはパニックに陥り、廊下には逃げ惑う様子が広がっていた。
やがて、警察が到着すると、記者たちは巻き込まれたくない一心で素早く撤退した。
廊下の混雑も徐々に収まり始めたが、緊張感はまだ残っていた。