第6章 波乱の一日
「ランチラッシュの飯は、いつ食っても美味ぇ……」
「わかる。あーあ、俺も委員長やりたかったなー」
「お前、さっきからそればっか言ってんな」
昼休みの食堂。
結と切島、上鳴の三人は向かい合って席につき、湯気の立つ定食に箸を進めながら、朝の学級委員長決めの余韻を話題にしていた。
上鳴は未練がましく唇を尖らせ、不満をテーブル越しにこぼす。
切島は「せっかく話題変えたのによ」と苦笑し、肩をすくめた。
「切島だって手挙げてたろ? やりたかったんだろー?」
「そりゃあ、男なら誰だってやりてぇはずだぜ、学級委員長……!」
「だよなぁー?」
切島の拳に宿る熱は、言葉以上に力強かった。
感化されたように、上鳴はさらに身を乗り出す。
「なあなあ、千歳は誰に票入れたん?」
「票? 秘密」
「秘密ぅ? 俺もこっそり教えるからさぁ!」
「さっき自分に入れたって言ってたけど……」
その一言に、上鳴は目を丸くしたまま固まり「俺バカかよ!」と自分の頭を抱え込んだ。
結と切島は顔を見合わせ、くすりと困ったように笑う。
二人は空のトレーを返却口に収めると、並んで廊下へ出た。
昼の空気はどこかゆったりと流れていた。