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お友達から始めよう【ヒロアカ】

第6章 波乱の一日



「ランチラッシュの飯はいつ食っても美味ぇ……」
「わかる。あーあ、俺も委員長やりたかったなー」
「お前さっきからそればっか言ってんな」


 昼食時、食堂のテーブルを囲む結と切島と上鳴の三人は、今朝の学級委員長決めの話題を引きずっていた。
 切島が「せっかく話題変えたのによ」と残念そうに呟く横で、上鳴は未練を抱いたまま唇を尖らせた。


「切島だって手挙げてたろ? やりたかったんだろー?」
「そりゃあ、男なら誰だってやりてぇはずだぜ、学級委員長……!」
「だよなぁー?」


 切島の声には熱意がこもり、握りしめた拳からは彼の真剣な思いが伝わってくる。
 切島の気迫に感化されたのか、上鳴はさらに話を続けようと身を乗り出した。


「なあなあ、千歳は誰に票入れたん?」
「票? 秘密」
「秘密ぅ? 俺もこっそり教えるからさぁ!」
「さっき自分に入れたって教えてくれてたけど……」


 上鳴はあっけにとられた表情を見せた後「俺バカかよ!」とようやく思い出した様子で叫んだ。
 結と切島は顔を見合わせて軽く笑い合いながら、そんな上鳴を置いて食べ終えたトレーを返却口へ戻す。
 二人は教室を目指して廊下へと足を進めた。


「千歳も自分に投票したのか?」
「ううん、似合う人に投票したよ。まあ、緑谷くんも頼りにしてるから、結果的には良かったかな」
「誰、誰!? 頭文字だけでも教えてくれよー! 切島と違って俺なら言いふらしたりしねーからさぁ!?」


 興奮気味に追いかけてきた上鳴に、切島は「俺もしねぇよ」と笑って返すが、結はどう答えるべきか迷っていた。
 頭文字だけでも教えようかと悩むが、それではすぐに正解にたどり着いてしまうだろう。
 そんな結の様子を見かねた切島は、諦めろと言わんばかりに上鳴の横腹を肘で軽く突いた。


「ヒントちょーだい! 何でもいいから!」
「何でも?」
「何でも!」
「じゃあ一つだけ。上鳴くん以外の人に入れたよ」
「そうだけどそうじゃない……!」


 上鳴は懲りずに天井を仰いで嘆く。
 その横で、何故か切島が爽やかな笑顔でガッツポーズを見せていた。
 そんな二人の様子に、結も思わず笑みがこぼれた。


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