第5章 戦闘訓練
「……さっきの戦い、常闇とうまく連携できてたな。無駄な動きが少なく、合理的だった」
「は、早いね。もう見たんだ?」
「本来は俺も参加する予定だったからな。もう録画は全部確認した」
「そうなんだ……。ほ、他には? 気になったことない?」
「他?」
淡々と返された一言に、結の胸が小さく跳ねた。
足元に視線を落とし、言いづらそうに口を開く。
「コスチューム、とか……」
相澤と一緒に考え、機能性を最優先に削ぎ落とした戦闘服は、戦場に立つ彼の姿をなぞるような想いがあった。
だが、結はそれを口にする勇気はまだなかった。
「あぁ、似合ってたよ。もう少し飾りがあってもいいと思うが」
「私はあのシンプルさが好きだなぁ。消太さんもそうでしょ?」
「邪魔にならんしな」
飾らない肯定がそっと手渡されたご褒美のようで、結の胸を温める。
すると相澤は視線をふいに逸らし、ひと呼吸おいてから身を引いた。
「……はい、さようなら。気をつけて帰れよ」
遠くに人影でも見えたのだろう。
声は教師のものに戻り、触れていた手が離れる。
動きは自然で、どこか名残を残していた。
そんな様子に、結はゆっくりと笑みをこぼした。
温もりの余韻を抱えたまま、教室へ戻っていく相澤の背中を目で追った。
やがて、その姿が角の向こうに消えると、結も夕暮れに染まる廊下を歩き出した。
足元の影がゆらりと寄り添い、放課後の校舎は静かに夜へ傾いていった。