第6章 波乱の一日
今朝の雄英高校はいつにも増して騒がしい。
戦闘訓練から数日が経過したある日。
オールマイトが教師として就任したというニュースは全国に広まり、多くの報道機関がその情報を求めて雄英高校に押し寄せていた。
登校時間になると目を輝かせた報道陣は校門に群がり、次々に現れる生徒たちの進路を無理やり塞いだ。
無遠慮にマイクやカメラを向け、生徒たちに息をつく暇も与えなかった。
「貴方もオールマイトの授業を受けましたか!? どのような感じだったのか、少しだけでもいいので聞かせてください!」
「え、えっと……」
結もこの混乱に巻き込まれていた。
静かに断りながら校舎へ逃げ込もうとしたが、玄関付近は人の波に埋め尽くされ、進むことすら難しい。
記者たちは抵抗を見せない結を見て、獲物を捉えたかのように群がり始めた。
カメラを向けられ、マイクが結の顔の前にぐいっと差し出される。
突然の事態に結の体は固まってしまった。
「一言だけでもいいので授業の感想を! お願いします!」
「オールマイトについて、どう思っているのかだけでも!」
「そ、そう言われても……」
なんとか言葉を絞り出そうとするが、思考が混乱し、口も上手く動かない。
そんな結に、記者たちは次々と質問を浴びせかけてきた。
無理強いなやり方に、結は口を開くことさえ難しく感じる。
話すことがないと示しても、彼らには全く届かない。
状況はどんどん悪化していき、ついには我慢の限界に達したのか、記者の一人が「オールマイトを知っているか?」という愚問まで投げかけてくる始末だった。
そんな声が飛び交う中、一人の若い女性記者が突然「あっ」と声を上げ、結に向けて大袈裟に指を差した。