第6章 戦闘訓練
「千歳少女が一番乗りだな!」
一足先に集合場所に着くと、そこにはオールマイトただ一人しか見当たらなかった。
軽く会釈をした結は周りに人が居ないことを再度確認する。
「オールマイト、今日のヒーロー基礎学って相澤先生は参加しますか?」
「いいや、相澤くんは急用ができてしまってね。参加できないとのことだ」
「そう、ですか」
「何かあったのかい?」
「……ううん、なんでもないです。ありがとうございます」
てっきり相澤も見守ってくれるのだろうと思い込んでいたが、参加しないことを聞いた結は「見てほしかったな」と残念そうに視線を落とす。
コスチュームのデザインは相澤と共に考えたもので、実際に身につけたのも今日が初めてだった。
「千歳!」
振り向いた先には、ゴツゴツとした赤いコスチュームを身につけた切島がいた。
上半身はほぼ何も着けていない状態で、鍛え抜かれた筋肉が嫌でも視界に入る。
結は切島の個性について何も聞いていないことに気付いた。
なるべく上半身を視界から外して、にこにこと笑顔を浮かべている顔に視線を合わせる。
「コスチューム、洒落てるな! 似合ってるぜ!」
「切島くんもすごく似合ってるよ。その服装は……個性に合わせて作ったから?」
「そうそう! 俺の個性は硬化つって近接戦闘向きでさ、服着てたらすぐボロボロになっちまうんだよな」
切島は一瞬で腕を硬くして見せた。
じとりと見続けている結の手を取ると、自身の腕にその手を置く。
「減るもんじゃねぇし触っていいぜ」
「あ、ありがとう。ほんとに硬いね」
「だろぉ?」
へへ、と得意げに鼻の下をこする切島。
その腕の皮膚を摘むことはできず、軽く叩いても切島に痛みはなく、叩いた側の結の手が痛んだ。
二人が話しているうちにコスチュームに着替えた生徒たちの姿が揃い始める。
「さあ! 始めようか有精卵共! 戦闘訓練のお時間だ!!」
やる気に満ちた全員が並ぶ。
広い空間に授業の開始を告げるオールマイトの声が響いた。