第5章 戦闘訓練
今回の授業は、入試と同じ演習場を使いながらも、市街地ではなく屋内での対人戦訓練だった。
生徒たちは敵組とヒーロー組に分かれ、二対二で戦う。
クラスの人数は二十一人のため、一組だけが二対三の特別編成となる。
勝利条件は単純に見えて、戦略性が問われた。
ヒーロー側は制限時間内に敵を制圧するか、アジトに隠された“核兵器”を回収すれば勝ち。
敵側は核兵器を守り抜くか、ヒーローを捕らえれば勝ち。
すべての生徒が公平に戦えるよう、ペアも対戦相手もくじ引きで決められた。
番号が告げられるたび、訓練場の空気がじわりと張り詰めていく。
結も箱に手を差し入れ、指先に触れた球を引き上げると、それには“H”の文字が刻まれていた。
「千歳少女は常闇少年とペアだ!」
オールマイトの声に、黒いマントを羽織った少年が控えめに片手を挙げる。
その仕草を見た結は軽く頷き、彼のもとへ歩み寄った。
「よろしくね、常闇くん」
「あぁ、よろしく頼む」
黒鳥を思わせる風貌に、静かな瞳。
常闇の放つ凛とした気配は、どこか相澤を思わせ、結は自然と親しみを覚えた。
全ペアが出そろうと、続いて対戦カードの抽選が始まる。
「最初の対戦相手は、Aコンビがヒーロー! Dコンビが敵だ!」
緑谷と麗日がヒーロー、飯田と爆豪が敵側。
名前が告げられた瞬間、場の温度がひとつ下がったように感じられた。
爆豪の名が出ただけで緊張が走る。
圧倒的な攻撃力と気迫を持つ彼は、すでに皆の意識を占めていた。
地下のモニタールームでは、生徒たちがスクリーンに釘づけになり、カメラは四人の開始前の姿をとらえている。