第5章 積み重ねる思い
「いたいた! なあ千歳、一緒に昼飯食おう……って悪ぃ。取り込み中だったか?」
元気の良い声の主は仲の良い切島だった。
まさか昼食に誘われるなど考えもしていなかった結は目を丸くする。
誘いは嬉しいが相澤の元に行かなくてはならない。
結は申し訳なく断ろうとする。
だが、先程の会話はなかったかのように金髪の男は真反対の言葉を口にした。
「Hey切島ボーイ! 用は今終わったばかりだァ! 千歳ガールもまだランチ食ってねェから一緒に行ってやってくれ!」
「え」
「イレイザーにはオレから言っておくからよ。今はフレンドと仲良くなるのが優先だぜェ?」
マイクは両手の人差し指をビシッと向けて明るい笑みを浮かべた。
そして「Bye!」と廊下に響き渡る声量で叫び、結を置いて姿を消した。
二人は嵐が去った後の静けさのような感覚にぽつんと取り残される。
先に我に返った切島はマイクの行動を真似して食堂方面に指を向けた。
「んじゃ、食堂行こうぜ千歳!」
「う、うん」
結は突然のことに呆気に取られ、何とか絞り出した声に感情が入ることはなかった。
そんな結を元気づけるように切島は笑顔を見せた。
広々とした食堂の中で、見覚えのある金髪の少年が大きく手を振っていた。
切島と結を呼び出したのは同じクラスで帯電の個性を持つ上鳴電気だった。
二人は列に並んで食券を買い、トレイに乗った料理を上鳴の待つ席に運ぶ。
三人でテーブルを囲んで談笑をしながら結は野菜の入ったサンドイッチを口にした。