第5章 積み重ねる思い
マイクは相澤と同じ仕事仲間で同期生だ。
そして、相澤の家に出入りする数少ない人物の内の一人。
授業時より声の大きさを控えているようだが、広い空間にはよく響く。
肩を抱いてグイグイと距離を詰めるマイクを片手で押さえつつ、結は今の会話を他の生徒に聞かれていないことを心の中で願った。
「あの、消太さ……えっと、相澤先生っていつもお昼は一人で食べてますか? 声掛けようかなと思って」
「イレイザーならエブリデイぼっちだぜェ! オレが誘ってもアイツ見向きも聞きもしねェし、昼はゼリー吸い込んで残りのタイムは睡眠に費やしてっからよ……っと、結ちゃん珍しくお怒りのご様子だァ」
「……毎日食べてるって聞いていたので」
結は溜め息を吐いて「ゼリー飲料はご飯の内に入らないって言ったのに」と呟いた。
それはマイク以外の誰の耳にも届くことは無く、賑やかな廊下に掻き消されていく。
「嘘をつくのはよくねぇなァ! んじゃあ、バッドなイレイザーに一言かましに行こうぜェー!?」
何故かテンションの高いマイクの後を追う途中、後方から早い足音が聞こえた。
結が振り返ると同時に、赤髪の少年は此方に向けて手を挙げていた。