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お友達から始めよう【ヒロアカ】

第1章 新しい日常


「なあ、入試の時にデケェ敵振り回してた人……だよな? ほら、最後に出てきた秘密兵器とかいうヤツ」


 彼は数ヵ月前に行われた入試試験で戦った仮想敵と呼ばれるロボットの大きさや形を手振り身振りを混ぜて話し出した。
 だが、結は覚えがなく、時間が過ぎるほど返事を待つ相手の表情に不安の色が浮かび始めた。


「……うん。多分それ、私かも」


 そんな表情から目を逸らし、結は途切れ途切れに言葉を返した。
 試験時、個性を使い巨大敵を遠ざけたことは薄々と思い出したが、野蛮な行動をとった記憶はなかった。

 結の返答に予想通りとガッツポーズを見せた少年は不安げな表情から花を咲かせた。


「やっぱそうだよな! 強ェ個性使ってたから忘れらんなくてさ。あん時と雰囲気が似てたからついガン見しちまった! あ、俺、切島鋭児郎! 同じクラスになれて嬉しいぜ!」
「千歳結。よろしくね、切島くん」
「千歳か! これからよろしくな!」


 勢いに押されながらも受け答えると、すっと手が差し伸べられる。
 握手を求められているのだと理解するには多くの時間は必要なかった。


「デケェ敵が出てきた時、俺近くに居てさ。瓦礫の下敷きになってた人を助けに行こうとしたんだけどよ、千歳が近付いた瞬間、デケェ敵は空中で回るし瓦礫もどっかに飛んでいくし……素早く救助しててすげえカッコよかった! 俺も負けてらんねえってアツくなったぜ!」
「そ、そうかな……」


 握手を終えた拳を握り、熱血に語る切島。
 対して結は「上手く使えなかった時の」と薄れた記憶の中から当時の様子を思い出していた。

 実技試験の終盤で導入された圧倒的脅威と称する巨大仮想敵。
 それを目の前にした結は、近くで瓦礫に足を挟まれ身動きが取れない人を助けるべく個性を使って巨大仮想敵を空中に浮かせた。
 切島は振り回したと話していたが、正確には救助の妨げになるため遠くへ退かそうとした。

 だが、想像以上の重さに個性が不安定になり、仮想敵は空中で蛇行。
 その光景を傍から見ていた人物は振り回しているように見えたのだろう。
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