第1章 新しい日常
「やあ、おはよう! ボク……俺は飯田天哉だ! 君もA組の生徒だな? これからよろしく頼むよ!」
「お、おはよう。えっと、よろしくね」
扉を開くと同時に整った青い七三髪でメガネをかけた少年、飯田天哉がテキパキと話し出した。
彼の様子を見るに、待ち伏せをして人が現れる度に声を掛けているらしい。
結は飯田の側を通り過ぎて席に着くと、漸く緊張から解放され、ほっと息を吐いた。
見渡した室内には初めて目にする個性を持つ人の姿があった。
すると突然、大きな音が教室に響いた。
扉の影から薄い金髪の尖った髪型で赤く鋭い眼差しの少年が現れる。
彼、爆豪勝己は静かに教室を一瞥すると、ズカズカと進んで自席に座った。
数秒前の物音は力強く開けた扉の音かと解決した矢先、爆豪は慣れた様子で机上に両足を組んで置いた。
その姿は不良そのものだった。
教室内の視線は全て爆豪に向けられている。
その机に近寄る勇気ある人影が一つ。
目先で立ち止まった飯田はきらりと眼鏡を光らせた。
「机に足をかけるな! 雄英の先輩方や机の製作者方に申し訳ないと思わないか!?」
「思わねーよ! てめーどこ中だよ端役が」
「ボ……俺は私立聡明中学出身、飯田天哉だ」
「聡明~!? くそエリートじゃねえか、ブッ殺し甲斐がありそだな」
「ブッコロシガイ!? 君ひどいな。本当にヒーロー志望か!?」
物騒な言葉にたじろぐ飯田の様子など気に留めず、爆豪は足を置き続けている。
顰めっ面で話を聞き流されているとは知らずに、飯田は注意を続けた。
落ち着かない空気の中、結は向けられている熱い視線に気付いて顔を上げた。
その視線の元には此方をじいっと見つめる赤髪の少年。
彼の髪型は爆豪と同じく尖っているが、爆発的な髪型ではなく髪を逆立てて固めているように見えた。
お互いの視線が合うと彼は結の席に歩み寄る。
その表情は微かに曇っていた。