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お友達から始めよう【ヒロアカ】

第4章 二人だけの時間



「俺、上鳴電気! よろしくー!」
「芦戸三奈だよー! よろしくね!」
「俺は瀬呂範太。知ってると思っけど」
「おい、マウント取るなよ」


 明るく弾む声が次々と結に集まる。
 帯電の個性を持つ上鳴電気と、酸の個性を操る芦戸三奈が元気に声をかけ、瀬呂範太はいたずらっぽく笑い、肩をすくめる。
 軽やかなやり取りに教室の空気がほぐれ、余韻が漂っていた。

 それに続いて、糖分の摂取で身体能力を強化する個性の砂藤力道、しなやかで力強い尻尾を持つ尾白猿尾、影をまとう黒影を従える常闇踏陰が次々と名乗る。
 結はひとりひとりに丁寧に視線を合わせて「よろしくね」と柔らかく応じた。
 最初はぎこちなかった輪の中に、少しずつ色が差し込むように距離が縮まっていく。


「そうだ。よければ、これ」


 結は左手を制服のポケットに差し込み、中に詰め込まれた大量の菓子に触れた。
 菓子は結の手から離れ、"念力"の個性で浮かび上がると、それぞれの手のひらに着地していく。
 クラスメイトたちは手の中に置かれた菓子を眺め、小さな宝物を受け取ったかのように瞳を輝かせた。


「リカバリーガールにもらったけど、さすがに多すぎたから……」
「やったー! ありがとう!」
「有難く頂こう」
「サンキュー! てか、千歳の個性って麗日みてぇな無重力系なん?」
「んー、まあ、そんな感じかな」


 やんわりと質問をかわした結は、自分もひとつ飴の包みを開け、口に含む。
 舌の上に乗せると優しい甘さがじわりと広がり、身体の内側に安らぎが降りてきた。
 この飴には、単なる甘味だけではなく、回復と癒しの効果が込められている。

 甘さに包まれたクッキーを口にした葉隠や芦戸が顔を綻ばせ、上鳴たちもその味と効能に感嘆の声を漏らす。
 教室には穏やかな笑い声が満ち、どこか非日常だった一日の終わりに小さな幸福が降り積もっていく。


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