第3章 君の味方に
「パワー系の個性かなって思ったけど、怪我も治せるとなると話が違ってくる……コピー系の個性なら種目ごとに乗り越えられるし……使える時間は限られていないのか……いや、決めつけるには早いな……他の理由があるのかも、例えば――」
結の曖昧な相槌にも気づかないまま、緑谷は続けた。
言葉は加速し、理論が形を成していく。
一頻り話し終え、ふいに顔を上げると、結がぽかんと目を丸くしていた。
その様子を見た瞬間、緑谷の顔がみるみる赤くなる。
頬から耳へと熱が広がり、さっきまでの自信はしゅんと萎んでいった。
「引いてるとかじゃなくて、えっと……びっくりちゃって」
「個性の話になると、つい語ってしまう癖で! あああ、お恥ずかしい……!」
結は困りながら笑って、熱のこもった様子にどこか温かさを覚えていた。
緑谷が身構えないよう、柔らかい声で続ける。
「なんとなく、緑谷くんらしいというか……止めてごめんね、続けて?」
「じゃ、じゃあ一つだけ……コピー系の個性はね――」
促されるまま、緑谷は語り出した。
思いつく端から言葉がこぼれ、熱に押されるように流れ続ける。
結は黙って耳を傾けながら、ひとつでは済まない勢いにそっと微笑んだ。
しばらくして再び、我に返った緑谷が片腕で顔を覆う。
先ほどまでの熱がすっと引いていき、その落差に結は思わずくすりと笑った。