第3章 君の味方に
「痛そうだったから、和らげようと思って。迷惑だった?」
「い、いや! 迷惑じゃないよ、ありがとう! でも、千歳さんの個性って――」
「なんだと思う?」
「わあっ!?」
距離を詰めた結に、緑谷は反射的に両手で顔を覆った。
結は小さく息を漏らし「そこまで驚かなくても」と呟く。
しかし、緑谷の返事はか細く震えていた。
「あ。そういえば、さっき相澤先生のゴーグルを見ただけでヒーロー名を当ててたよね。ヒーロー、詳しいの?」
「う、うん。毎日欠かさずニュースとかチェックしてるから、イレイザーヘッドの活躍記事も何度か読んでて……」
活躍記事の一言に、結の肩がわずかに揺れた。
なにかが胸をかすめ、言葉が喉で止まる。
それでも気づかれぬよう、すぐに表情を整えた。
「そうだ。私の個性、緑谷くんなら当てられる?」
明るく促すと、緑谷は思わず立ち止まった。
好きな話題を向けられたとき特有の、わくわくを押しとどめたような表情。
次の瞬間、瞳に真剣な光が宿る。
「千歳さんの個性は……複数の力を扱えるコピー系、かな?」
「ん、どうして?」
結の問いに緑谷の思考が動き出す。
確信と慎重さが混ざり合い、言葉は自然と熱を帯びた。
「一種目目から気になってたんだ。走る速さ、投球の距離……。握力も桁外れだって聞いたけど、さっき握手したときは力が入ってなかった。つまり、常に身体能力が高いわけじゃない。それに、強化系なら飯田くんの個性に似せてたことが引っかかるんだよな……」
「……うん?」