• テキストサイズ

お友達から始めよう【ヒロアカ】

第2章 本気の裏側


 残りの種目を終えた結は、賑わいの輪から少し離れ、芝の上で立ち尽くしていた。
 遠くにそびえる校舎をぼんやりと眺めながら、右手に意識を向ける。
 指の感覚は薄い。
 握ろうとしても力は入らず、かすかな反応すら返ってこない。
 軽い痺れは日常のようなものだったが、ここまで明確な麻痺に近い感覚は、久しく忘れていたものだった。
 帰る頃には治ればいいなと、どこか他人事のように願い、そっと息を吐いた。


「んじゃ、パパッと結果発表」


 相澤が無造作に端末を操作すると、上空に透ける映像が浮かぶ。
 二十一名分の順位が並ぶ中、左上の最上段に一の数字とともに千歳結の名があった。

 ――やってしまった。
 背中に冷たい汗が伝う。
 本来は力を抑えて挑んだはずだった。
 だが、結果はそんな意図をあっさり裏切る。
 視線を落とすと、リストの一番下には緑谷の名があった。
 相澤の言葉通りなら、最下位は除籍。
 今日限りで彼はここにいられない。
 胸の奥にざらつくような感覚が生まれ、結はリストを見つめ続けた。


「ちなみに除籍は嘘な」
「えっ」
「君らの最大限を引き出す合理的虚偽」
「はあーー!?!?」


 相澤の声音にはどこか愉快そうな響きがあった。
 軽く告げられた真実に、生徒たちの声が一斉に跳ねる。
 驚き、困惑、怒り、さまざまな声が混ざる中、結は口をぽかんと開けたまま固まっていた。
 まさか、最初から全部――理解が追いつくまで数秒かかり、頬がじわりと熱を帯びた。


/ 173ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp