第2章 諦めない強い心
「ちなみに除籍は嘘な」
「えっ」
「君らの最大限を引き出す合理的虚偽」
「はあーー!?!?」
最後の最後まで騙されていたことに驚きの声が響き渡る。
結もその内の一人だった。衝撃で声を出すことはなかったが、ポカンと口が開いていたことに気づくには少し時間がかかった。
「教室に置いてある書類に目を通しておけ」
全員に聞こえる声量で告げた相澤は、教室に向かう生徒たちの横を通り過ぎると一人目の怪我人、緑谷に保健室利用許可証を手渡す。
その足で二人目の怪我人である結の前に立つと、迷うことなく同じものを差し出した。
「お疲れ」
「えっと、これは?」
「書いてある通りだ。手、ばあさんに治してもらえ」
「いつから気付いて……」
「長座で手の動きが不自然だったからな。どこで怪我したのかは知らないが、誰でも気付くぞそれ」
「……バレないと思ってたのになぁ」
目の前で紙をひらひらと揺らして「右手で取れるものなら取ってみろ」と煽る。
結は使い物にならない右手の代わりに左手を伸ばすが、躱されて段々と高く上げられてしまう。
精一杯背伸びをしても尚背の高い相澤に勝てるわけもなく、手が届くことはなかった。