第15章 弱さに宿る力
表彰台の左端に立つ轟は、紅と白の髪をなびかせながら静かに視線を落としている。
銀色のメダルが首にかけられると、オールマイトと言葉を交わしていた。
遠くからでは内容は分からなかったが、深い葛藤の中にいるはずの彼の表情が少しだけ和らいだように見えた。
一方で隣では、爆豪が眉間にしわを寄せながら二人を睨みつけていた。
「オールマイトォ……こんな一番、何の価値もねぇんだよ……!!」
「まぁまぁ」
口枷を外されるや否や、爆豪は怒りを露わに声を荒げた。
鋭い目つきに強張った顔。
あまりにも険しい表情に、オールマイトですら内心「顔すげえ」と苦笑したほどだった。
金色に輝くメダルを爆豪の首にかけようとするが、彼は頑なにそれを拒み、頭を揺らして抵抗した。
オールマイトは柔らかな声をかけながら紐を滑らせ、最終的には爆豪の口元へと通す。
紐が唇に引っかかり、金色のメダルがぶら下がる形で収まると、爆豪はさらに苛立ちを募らせていた。
「さあ! 今回は彼らだった! しかし――」
そして、オールマイトの力強い声が響き渡る。
誰にもこの場に立つ可能性はあったこと、次代のヒーローは確実に成長していること。
真実味がある言葉は、生徒たちの胸に深く刻まれていく。
それは、未来への希望を抱かせる、眩しいほどの光のようだった。
「それでは最後に一言! 皆さんご唱和ください! せーの!」
「プルスウルトラ!!」
オールマイトの掛け声に応じて、会場全体が声を合わせた。
だが、その中で一人だけ異なる言葉が飛び出した。
「お疲れ様でした!!」
困惑に満ちた空気を突き抜けるように、笑い声とブーイングが入り混じった喧騒が巻き起こる。
外してしまった本人であるオールマイトは、頬を掻きながら肩を竦めた。
その仕草が余計に場を和ませた。
長かった体育祭が終わりを迎える。
波乱と興奮に満ちた体育祭は最後に雄英高校らしい温かな笑いを添え、静かに幕を閉じた。