第16章 手放せない熱
『公園集合』
「急だよね、君……」
『やっと時間作れたんだ。早く来いよ』
男はすでに公園にいるのだろう。
だが、結の体には体育祭の疲れが残っていた。
午後の予定を思えば、できるだけ体力は温存しておきたい。
久しぶりに会いたい気持ちと、もう少し眠っていたい欲求がせめぎ合う。
歯切れの悪い返事から、男は結が二度寝しかけていることを察していた。
『……そういや、前に言ってたヤツやってたな』
「行く!」
結は反射的に体を起こし、布団を蹴った。
名残惜しい温もりを振り切って顔を洗い、手早く身支度を整える。
カーテンの隙間から差し込む朝の光が、寝癖の残る髪を淡く照らしていた。
高く昇り始めた太陽は空を鮮やかな青に染め、雲は薄く引き伸ばされるように流れている。
待ち合わせの公園は、結にとって思い出深い場所だった。
幼い頃に幾度となく遊び、あの男と出会った、すべての始まりの場所でもある。
ブランコや滑り台のある広場を横目に、結は少し奥まったベンチへと足を向けた。
そこに、黒いコートに白いシャツという軽装の細身の男が腰掛けていた。
口元は黒いマスクで覆われ、手持ち無沙汰なのか携帯端末を取り出しては、すぐにポケットへ戻している。
マスクの縁や袖口から覗く肌には、昔と変わらず火傷の痕が残っていた。