第16章 手放せない熱
昨夜の残り物で簡単に夕食を済ませ、寝る準備を整えたところで、強い睡魔が容赦なく結を襲った。
体の芯まで沈み込むような疲労感に抗えず、ソファーで眠るのは諦めて自室へ向かう。
布団に潜り込むと、意識は数秒で途切れた。
幸いにも、息苦しさで目を覚ますことはなかった。
だが、右手を走る鈍い痛みが、結の意識を現実へと引き戻す。
違和感に目を凝らして薄暗い部屋を見渡すと、ティッシュやゴミ箱といった小物が散乱していた。
また無意識のうちに個性を使ってしまったのだろう。
重たい体を起こしてそれらを元の位置へ戻し、結は再び布団に身を委ねた。
次に目を覚ますと、カーテン越しに穏やかな日差しが差し込んでいた。
その静けさを破るように、枕元に転がった携帯端末が小刻みに震える。
誰からの電話かは、考えるまでもなかった。
鳴り止むのを待とうと目を閉じたものの、相手は簡単に諦める気がないらしい。
何度も繰り返される呼び出し音に、結は布団の中から左手を伸ばして画面をスライドさせた。
『遅せェ。今起きたのか』
寝起きの結の耳に、電話越しの低い笑い声が届く。
その向こうで、子供たちのはしゃぐ声が重なっていた。
意外な音に、靄のかかった頭がゆっくりと覚醒していく。