第15章 弱さに宿る力
「アンタさんも見ただろう? ありゃ、暴走寸前さ。自分で止めれたからよかったものの……この子の右手、自由が効かない状態が数日は続くだろうね」
相澤の目がわずかに見開き、一つ一つの説明が耳に突き刺さる。
そんな様子に、リカバリーガールは言葉を飲み込み、沈黙した。
「……まさか、まだ聞いていないのかい?」
「痺れは何度か……他には、何も」
「はぁ……全く、自分のことを話すのが下手な子だよ。あぁ、アンタを信用していないわけじゃないさ。きっと、心配かけたくないんだろうね」
彼女は息を吐き、手元の器具を片付け終えると相澤に目を向けた。
視線の先で、相澤はベッドに横たわる結をじっと見つめている。
「それから……気を失った理由は疲労と、睡眠不足も原因だよ。一緒に住んでいるからって、全部任せきりにしているんじゃないだろうね?」
「いや、今は一人で寝て――」
「あんまり口を挟みたくないけども、甘やかしすぎると後で苦労するのはこの子だよ。一度、時間を作ってしっかり話し合いな」
放たれた苦言に、相澤は短く応じただけだった。
ほどなくして、天井のスピーカーから表彰式開始を告げる放送が流れ、冷たい合図として現実を突きつける。
背を押されるように、相澤は重い足取りで立ち上がった。
扉が閉まる鈍い音が室内に広がり、残された空気はひんやりと沈んだ。
短い眠りの間に、結の意識は太ももに感じた衝撃で夢の世界から引き戻された。
何度も繰り返し叩かれる感覚に、夢と現実の境界がぼやける。
夢の余韻を引きずったまま伝えられた予定に、結は言葉を失い、顔色を曇らせた。
飯田との戦いが実現せず、順位が決まってしまった。
それが胸に重くのしかかっていた。