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お友達から始めよう【ヒロアカ】

第15章 弱さに宿る力



「えっ、ば、爆豪くん? いつからそこに……!?」
「乱暴するんじゃないよ。あたしゃ、ちょっと外出てくるからね」
「な、なななんで言ってくれなかったんですか!」
「騒ぐのも禁止だよ!」


 リカバリーガールは結の驚きも気にせず、慣れた足取りで部屋を出ていった。
 扉が閉まる際にわずかに音を立てる。それは静かな室内に大きく響いた。

 ゆっくりと壁から身体を離した爆豪がポケットに両手を突っ込んだまま、無言で結に歩み寄る。
 その姿に、結は思わず背筋を伸ばしてしまった。
 だが、彼の顔にいつもの険しい棘はなく、どこか和らいだ表情が浮かんでいるように見えた。
 それがまた、結を戸惑わせていた。


「……右手、なんかあったんか」
「な、何も……うん、なんでもないよ、大丈夫」
「嘘下手か」


 短く吐き捨てた声には、いつもの苛立ちは感じられなかった。
 爆豪はリカバリーガールが使っていた椅子にどかりと座って足を組む。
 もうしばらくここにいるつもりなのだろう。

 二人しかいない空間。
 話を逸らしたくても誤魔化しはできない、結にはそれなりの覚悟が必要だった。


「ンで、"あんなこと"ってなんだ」
「…………爆豪くんは、全力で個性使ったことある?」
「あるわ。常に全力だクソが」


 少し間を置いて、結はようやく口を開いたが、爆豪の返事は即答だった。
 当たり前だと言わんばかりの勢いで返した言葉に、迷いも躊躇も感じられなかった。
 結は答えを聞きながら、そっと爆豪の顔を見て、すぐに視線をそらす。
 話すべきか、話さないべきか、心の中で葛藤が生まれていた。

 普段ならば、爆豪はこの状況で苛立ちながら結に詰め寄るだろう。
 しかし、今は違った。
 彼は一切口を挟まず、話し出すのをただ待っている。
 静かな視線は普段よりも柔らかく、穏やかだった。


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