第15章 弱さに宿る力
「一度だけ、全力で使ったことがあるよ。でも――」
結の肩が小さく揺れる。
視線は布団に固定され、前髪の下に隠れた表情は読み取れない。
「ぜーんぶ、めちゃくちゃになっちゃった」
過去を掘り起こすように話す声には、どうしようもない諦めと悲しさが宿っていた。
大切なものを失った者だけが持つ、独特の響きだった。
爆豪は声をかけられずに、うつむいた肩の小さな震えを見つめるしかなかった。
「私が雄英に入ったのは、ヒーローになりたいのもあるけど……早く、個性に慣れたいから。これは先生も知らない、私だけの秘密。話しちゃったから、秘密じゃなくなったけど」
「人のせいにすんな」
「聞いた君のせい」
爆豪は眉間に皺を寄せ、床に視線を落とした。
どこか不満げで、苛立ちを漂わせている。
「……守りゃまだ秘密だろ」
こぼれ落ちた声は、爆豪自身も驚くほどに小さかった。
その不意打ちに、結はわずかに遅れて顔を上げる。
見開かれた瞳が爆豪を捉え、柔らかな笑みが滲んだ。
「そうだね。約束する?」
「ガキみてェなことしねーよ、幼稚が」
「よく言われる」
軽口めいたやり取りのあと、結は左手を持ち上げ、小指を差し出した。
子どもじみている行為に、爆豪は応じることも退くこともできず、指先を見つめた。