第15章 弱さに宿る力
リカバリーガールは結の驚きを気にせず、慣れた足取りで部屋を出て行った。
扉の閉まる音が静かな室内に響く。
ゆっくりと壁から身体を離した爆豪は、ポケットに両手を突っ込んだまま、無言で歩み寄る。
彼の顔に険しい棘はなかった。
「個性がどうの言ってたな。なんかあったんか」
「な、何も……うん、なんでもないよ、大丈夫」
「嘘下手か」
短く吐き捨てた声には、いつもの苛立ちは感じられない。
爆豪はリカバリーガールが使っていた椅子に座り、足を組んだ。
しばらく居るつもりなのだろう。
「ンで、“あんなこと”ってなんだ」
「そ、れは……」
「言わねェと退かねェからな」
「……き、君は、全力で個性使ったことある?」
「あるわ。常に全力だクソが」
即答の言葉に、結はそっと顔を見て、すぐに布団へ視線を落とした。
話すべきか、話さないべきか。
小さな葛藤が胸の奥でざわめいていた。
「……死ぬ気とか、殺す気って、怖い言葉を言う君が少しだけ嫌になって……個性が、抑えられなくなった」
「テメェの個性なのに、使い方も分からねェのか」
「私の個性は、見たことのある個性を使えるけど……さっきみたいに、知らない個性が出たりするの。だから、使いたくない……怖い、から」
震えた声が部屋に落ちる。
その言葉は、結が胸の奥に抱えていた傷口を切り開くようだった。
自分の力が自分で制御できない恐怖。
それを爆豪はようやく理解し始めた。