第15章 弱さに宿る力
「とっとと使え! 痛い思いしたくねェだろ!」
再び爆豪が右手を掲げる。
彼の動きに合わせて、結はセメントの個性を使った。
二人の間に巨大な壁が立ちはだかると、熱風がぶつかり、周囲の空気が揺れる。
その向こうから、爆豪の視線が鋭く突き刺さるように感じられた。
「私はみんなと違う……君の強さに張り合いたくないし、勝ちたくもない……! ここまで来れたから、もう戦いたくないのに……っ」
結の声が壁越しに震えながら響く。
爆豪はその言葉に一瞬眉をひそめたが、すぐに顔を上げた。
「俺はなァ……譲りてェとか、勝ちたくねェからとか、半端な覚悟でここまで来たテメェにイラついてんだよ!」
壁の一部が粉々に砕け散り、破片が地面を転がっていく。
砂埃が空中に舞い上がり、爆豪の姿が砂煙の中からゆっくりと浮かび上がる。
怒りに燃える瞳、眉間には深い皺が刻まれていた。
「USJん時もだ! 敵相手に悩みやがって、俺がやらなきゃテメェはとっくに死んでたわ!! 殺す気で来い、死ぬ気で俺に挑め!!」
爆豪の叫びは耳を突き刺し、結の視界がぐらりと揺れた。
足元が霞み、まるで地面が崩れていくような錯覚に陥る。
彼の言葉が頭の中で何度も反響し、胸の奥に鉛のような重みが生まれた。
「なんだ? 言い争い始めたぞ?」
「つか、準決勝にしてはなんかパッとしない戦いだな……」
観客席から聞こえるざわめきや失望の声。
結の耳にはそれが頭に突き刺さるように響いた。
鼓動が早まり、息が荒くなり、胸が詰まる。
胃の奥からこみ上げる吐き気をどうにか抑える間に、視界はどんどんぼやけていく。
「……っは、だめ……離れて……っ」
「はぁ?」