第15章 弱さに宿る力
ただの挑発ではない、勝利への飢え、自分を見下されたことへの怒り、それら全てをぶつけるような声だった。
結は速攻を警戒し、地面に手を伸ばす。
触れた瞬間にセメントを操り壁を作り出すつもりだった。
しかし、爆豪の動きは想像を遥かに上回っていた。
意識が追いつく前に、轟音とともに頭上からの爆発が結を襲う。
熱風と衝撃が全身を貫き、体は宙に舞った。
気づけば地面に叩きつけられ、砂埃が目と鼻を覆った。
「……いたっ、早すぎる……っ」
結は痛みに息を飲みながらも、自分が白線の近くにいることを認識する。
数歩足を踏み出せば場外と判定され、この戦いは終わりだと。
結の頭の中には戦うことよりも負けることが埋めつくしていた。
それを察した爆豪は結の腕を掴むと、そのまま中央に向けて投げ捨てた。
「逃げる暇なんかねェぞ!!」
「んぐっ……!」
何度も地面を転がるうちに結の服は擦り切れ、砂埃で汚れていた。
全身に広がる痛みを噛み殺しながら立ち上がろうとするものの、その様子を見ていた爆豪の表情はますます険しくなる。
「おい、いつまでだらだらしてんだ」
「……私は、本気で戦えないし、全力も出せない」
「あァ?」
「一位になるって宣言した人の邪魔をしたくないの……っ」
「ハッ、要は踏み台になっから早く倒せってか? だったら、最初から満足に個性使ってみろや!」
怒りが頂点に達したかのような叫びが響き、背後に回り込んだ爆豪の爆撃が結の背中に直撃した。
勢いに押されて前のめりに倒れ込む結。
朦朧とする意識の中で震える手を地面に突き、ゆっくりと顔を上げた。