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お友達から始めよう【ヒロアカ】

第14章 勝利の苦味



「――……おーい、千歳? 大丈夫か?」
「……えっ?」
「次の試合、千歳もだろ? 常闇はとっくに控え室行っちまったけど……さっきからぼーっとしてねぇ? 具合悪ぃのか?」


 心配そうに顔を覗き込んでいる切島の声で、結はようやく現実に引き戻された。
 緑谷と轟の試合が終わった後からずっとぼんやりしていたらしい。
 気づけば次の二戦目、飯田とB組の塩崎の戦いはすでに終盤を迎えていた。


「だ、大丈夫! 教えてくれてありがとう、行ってきます」
「頑張れよ! 準決勝で会おうな!」
「どっちも応援してるよー!」


 仲間たちの励ましに手を振り返しながら、結は控え室へと急いだ。
 やがて、試合開始を告げる放送が響き渡ると、二人は肩を並べて競技場へと歩き出した。


『さぁさぁ、お次は第三試合目! 両者、個性の実力ある戦いだァ! 常闇、対、千歳!! START!!』
「……悪いが、一瞬で終わらせてもらう」
「え、わっ――」


 常闇の低い声が耳に届いた直後、黒影が猛然と結に襲いかかる。
 振りかぶられた黒影の拳が周囲の風を掻き乱し、その衝撃波だけで結は地面を転がった。
 黒影は反撃の隙を与えることなく追撃し、結を白線近くまで追い詰めていく。


『またもや千歳が場外に向かって押されていく! さっきも見たなこれ! 考える対策はみんな同じだァ!!』


 間一髪で地面に右手をついた結は、すぐに個性を発動させた。
 セメントの壁が音を立てて前後に立ち上がり、黒影の猛攻を遮断する。


「びっくりした……もしかして、黒影にも触らせないようにしてる?」
「念の為にな。その他の個性にも警戒はしている、触れられた瞬間に終いだからな」


 常闇は次の手が来る前に終わらせるつもりなのだろう。
 指示を受けた黒影がセメントの壁を打ち壊し始め、それはみるみる崩れ落ちていく。

 白線に押し出されるのは時間の問題だと悟った結は、芦戸との戦いで用いた戦術を思い出す。
 地面から小石を生成して投げつけるが、黒影によって弾かれてしまった。


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