第14章 勝利の苦味
「――……おーい、千歳? 大丈夫か?」
「……え?」
「次の試合、千歳もだろ? 常闇はもう控え室行っちまったけど……さっきから、ぼーっとしてね? 具合悪ぃ?」
心配そうに覗き込む切島の声で、結はようやく現実へ引き戻された。
どうやら、緑谷と轟の試合が終わってから、無意識のうちに思考を手放していたらしい。
気がつけば次の第二試合、飯田とB組の塩崎の戦いは、すでに終盤を迎えていた。
「だ、大丈夫。教えてくれてありがとう、行ってくるね」
「頑張れよ! 準決勝で会おうな!」
「どっちも応援してるよー!」
仲間たちの声に手を振り返し、結は控え室へと急いだ。
やがて試合開始を告げる放送が響き渡り、二人は肩を並べて競技場へと歩き出す。
『さぁさぁ、お次は第三試合目! 両者ともに実力派! 常闇、対、千歳!! スタート!!』
「悪いが、一瞬で終わらせてもらう」
「え、わっ――」
低く抑えた常闇の声が届いた直後、黒影が猛然と結へ襲いかかった。
振り抜かれた拳が風を切り裂き、その衝撃だけで結の身体は地面を転がされる。
『またもや千歳が場外へ押されていく! さっきも見たなこれ! 考える対策は皆同じってことかァ!?』