第14章 勝利の苦味
「今戦ってるのってヤオモモと常闇だっけ?」
「そーそー。でもこれ、早いとこ勝負つくかもな」
轟音が鳴り響く競技場では、八百万が創造の個性で盾を生成し、黒影の猛攻を防いでいた。
懸命に次の一手を考える八百万だが、常闇の指示を受けた黒影は隙を見逃すことなく追撃を続ける。
やがて、攻撃を止めた黒影は常闇の元へと戻っていった。
八百万も作戦に出るべくパイプを作り出したが、彼女の立っている位置は白線の外側。
ミッドナイトの声が勝敗を告げる。
やるすべも無く八百万は敗退、二回戦進出は常闇に決まった。
「次は常闇くんと、か。黒影って触れるのかな……」
「たまに常闇が撫でてるとこ見かけるし、触り判定あるっしょ!」
軽い調子で答えた上鳴だが「いや待てよ、そもそも影だから触れないのか……?」と、自分で言ったことに疑問を持ち始める。
やはり戦って試すしかないかと、結は痺れている右手を揉みほぐし、先程の戦いから得られる対策を練っていた。
「うっし、そろそろ行かねぇと! 応援頼むぜ!」
「おー! 勝ってこいよ!」
「ファイト切島! やっちゃえ切島!」
賑やかな声援に、切島は拳を握りしめて気合を入れた。
遅れながら結も声援を送ると、切島は大きく頷いて力強い足取りで競技場へと向かっていった。