第13章 並び立つには
二枚とも結の表情はどこか硬く、頬にはほんのりと赤みが差していた。
記念として残すには少し惜しい写真だ。
だが、マイクは撮り直す時間を与える間もなく、手を伸ばして結の頭を撫で回し始めた。
「本戦出場、すげーなァ! 相澤も満足そーだったし、例のアレ、叶うかもよ?」
「ほ、ほんと?」
ニヤリと得意げな声色に、結は思わず顔を上げた。
その表情はみるみると明るくなっていく。
数日前、相澤と交わした約束。
それは、扱える個性を出し惜しみなく使うことだった。
個性把握テスト時から懲りない相澤に、褒美がなければやる気も出ないと口出した山田。
その褒美に頭を悩ませる結だったが、山田の「相澤と買い物に行く」という提案に、瞬く間に瞳を輝かせた。
全力を出しているように見せることが重要だと、上位に入るために結は個性を駆使してきた。
だが、特訓を経て成長したのは結だけではなく、誰もが手加減せずに挑んでいる。
右手を無傷のままで終えることは難しいだろうと、早い段階で半ば諦めていたが、現時点で気になる程度の痺れで留まっていることだけが救いだった。
「んじゃ、俺ァ飯食い行ってくるな! 一位目指してファイトだ、結ちゃん! 応援してるぜェ!」
結は片手でボサボサになった髪を整えると、もう片方の手を振り、食堂に向かっていくマイクの背中を見送った。
神経を研ぎ澄ます者、緊張を解きほぐそうとする者。
時はあっという間に過ぎ去り、その瞬間が訪れようとしていた。